アロットメント
子供の頃、夢中になったことや、好きだったことは、大人になっても変わらないことが多いみたいですが、わたしにもそういうものがいくつかあります。その中のひとつに、実っている野菜や果物を眺めたり、収穫するということ。実っている野菜や果物は延々と眺めていられ、そしてこの上のない喜びを感じます。。。幼稚園や小学生ぐらいの頃ですが、遠足でミカン狩り、栗拾いなどに出かけたり、芋ほりをしたり、田舎に行く機会があった時、畑でスイカを収穫したり、桃がなっている木を眺めて感動したり。その時の記憶が鮮明に残るほど、そういったことが好きな子供だったようで、やはり今もそれは同じなのです。
今はイギリスのヨークシャーの小さな村で暮らしていますが、ここは、電車に乗ればちょっとした都会にも出られ、またすぐそこに森や丘、谷もあり、、、多くを求めなければほどよく暮らすにはちょうどいい小さな村です。電車に乗って都会にでることもたまには楽しいですが、日々の暮らしの中では、森へ行ったり、アロットメント(畑)へでかけるのがほとんど。アロットメントとはイギリスでは一般的なもので、市民が野菜や果物、植物を育てるために安価で借りられる土地のことです。素人ではありますが、学びながら無農薬で大切に野菜や果物を育てていく喜びを体験することができます。
村に住み始めてからはまず村の野菜・果物作りのボランティアに参加しながら少しずつそれらについて学びました。そのうちに、本格的に借りられるアロットメントの順番を待っている間(アロットメントは希望者が多い場所では数年ぐらい順番待ちをすることがあります)仮の小さなスペースでじゃがいも、ガーリックやそら豆、いちごなどを育てました。とても小さいスペースでしたが、初めの第一歩でしたのでうれしく、そこでできる範囲のことをしていました。それから数年後やっと順番が回ってきて、本格的なスペースを借りられることになりました。リンゴの木やプラムの木もある、そのときのわたしたちには夢のようなスペースでした。放置されていた状態で手入れは必要でしたが、たまたまロックダウンという状況も重なり、土地を整え、たくさんの野菜や果物を育て収穫をしました。そうしているうちに、もう少しスペースがあればいいなと思うようになり、いいタイミングでさらに大きなスペースが提案されました。初めの第一歩からだんだんとスペースも大きくなり、その分、経験も積んでいたので、再び数年放置されていた場所で一からの開拓ということでしたが喜んで受け継ぐことになりました。その畑にはすでにいくつかのリンゴの木、プラムの木、ダムソン、サクランボ、洋ナシの木などがあり、スペースの約半分は果樹園のようになっていました。雑草が生い茂る中、他にもベリー類やカラント類がたくさん植わっているのを見つけました。放置状態で雑草とゴミの山になっていた温室もきれいに片づけてガラスを磨いただけでとても立派に。数年手入れのされていなかったトレリス(木の柵)も補強のペンキを塗って甦ってきました。受け継いでまだ2ヵ月弱ですが風と光の通しが良くなってきました。
実はこのアロットメントは前のオーナーさんが体調を崩されたまま全く手入れをすることができず数年放置されていましたが、でもどうしても手放したくないという土地であったようです。それは亡くなられた奥様との思い出が詰まっていたから、というものでした。何かの物事に対していろいろと沸き起こる思いや感情があるのは、人間を経験してきた中で理解できますし、それを優しさをもってそのままにしておく、ということもわかります。ただ、この土地自体がもうそういう状態でいられなくなったというということもあったのか、ものごとが急に動き出し、あるときふっと快く手放されました。様々な思い、愛着や執着、感情。。。何かを所有すると出てくるエゴマインド、人間だれしも体験していることだと思います。でももしかしたら、そういうものは本当は必要ないことなのかもしれませんね。。。楽に軽やかにいられるのはどっちだろうかと考えたら。所有という概念もなく、すべてを分かち合いひとつであったときのことを思い出していきたい、そんな風に感じた一連の出来事でした。
ふっと手放され、ふわっと何かがおこり。その後はフラワーエッセンスも利用しながら土地の浄化、新しい風、光を届けるようにヒーリングしていきました。(実は本格的に引き継ぐ前から少しずつはじめていました。)もともと持っていた素敵なキャラクターが顔を出しはじめ、さらに軽やかに、明るくなっていきました。わたしは心の中で、好きなイギリス児童文学、秘密の花園を思い出していました。そしてペンキを塗りながら、わたしたちがここを手放すときがきたらすっと後に引き継ごう、それまではたくさんの喜びをここで体験していこう、そんな風に考えたりしていました。今はまだまだ開拓途中ではありますが、暖かい季節になった時の美しい姿を想像しながら。
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